【小説紹介】天国の五人

ある日の新聞の記事で京都の女子高生が書いた感想文が掲載され、その感想文を読んで本を手にとってみた。

自分の祖母の死をきっかけに、その頃の体験を絡めて書いた感想文。

いい話だと思った。

第51回青少年読書感想文コンクールの課題図書だ。


著者のミッチ・アルボムは、もとアメリカのスポーツジャーナリスト。

その当時の話は、同じく全米で大ヒットした『モリー先生との火曜日』で描かれている。

『天国の五人』は、『モリー先生との火曜日』に続く大ヒット作。

全米で550万部売れたという。

アメリカ人がもっとも好みそうなストーリー。

はっきり言ってしまえば、お涙頂戴系の大味な作品だ。

だけど、それを評価したアメリカ人はさすがだと思った。

人にやさしいい小説こそが、もっとも読まれるべき小説であるのかもしれない。

そう思った。

アメリカ人はあらかじめわかっていた、ということになる。

新しさや奇抜さが重視され、その物差しですべての評価が決定してしまうような、今のニッポンの文壇。

だから、行き詰まったんではないだろうか。


主人公エディは、遊園地のメンテナンス係り。83歳の爺さんだが、現役だ。

ある日、遊園地内で事故が発生する。

ひとりの少女を救出しようとして、巻き込まれ死んでしまう。

死んだところから、お話は始まった。

自分に何の価値も無いと思っていたエディ。

天国で、次々に自分の人生と関わりがあった人と会ってゆく。

五人の人間と、五つの教え。

次第にエディは自分の人生について肯定的に考える・・

『人間は、それまでの私も含めて、ひとりで生きていると思うことが多いのではないか。「自分はなにか」と問い、自分自身は掘り下げることはあっても、他者の中に自分の現実の姿を映し出すことは少ないのではないか。それは、他との関わりを重く見ていない、または相手の嫌なところを見たり、傷つけられたりすることを恐れているからかもしれない』(同志社国際高校3年 高田幸歩さんの感想文より)


エディの父は、同じく遊園地ルビー・ピアのメンテナンス係だった。

エディはずっと父に反発していた。

父が許せなかった。

無視、沈黙、愛情を受けたことがなかったと思っていた。

父とはほとんど言葉を交わすことは無かった。

そんなエディは反発の末に、父と同じ職業に就いた。

体の弱い母を気遣っての選択だった。


天国で会った三人目は、ルビー・ピアの名前の由来になったルビーという女性。

ルビーからは父の死の真実を知らされた。

『親が子供を手放すことは滅多にない、だから、子供の方から親を突き放す。子供は前へ進んでいく。どんどん離れていく。かつて自分を定義してくれた瞬間  母が賛成し、父がうなずいてくれた瞬間は、自分で事を成し遂げた瞬間の陰へと埋もれていく。子供にはずっとあとになって自分の皮膚がたるんで心臓が弱る年になるまで分からない  自分の物語も自分が成し遂げたことも、何もかも、人生の波の下で石の上に石が積み重なっていくように、父母の物語の上に積み重なっているのだということが。』(本文より)

そしてエディは父を許すことができた。


ディケンズの『クリスマス・キャロル』もこれと似たような話で同じく美しいお話。

天国に対する理想は誰にでもある。

エディもスクルージも、死んでから気がついた。

人間とは本来、愚かなものだ。

そんな愚かな人間だからこそ、泣いたり、笑ったり、傷ついたり、浮かれたり、嫉妬したり、蔑んだり、賞賛したり、生きたいと思うことも、時には死にたいと深く考えることも・・・

愚かだからこそ、人間は美しいといえる。


ただし、ボクは死ぬ前に気づきたい。

直接会って、感謝したいから。
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by ronndo9117 | 2006-02-21 11:44 | 【オススメ小説紹介】
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